山手線を一周まわったときの話

東京の真ん中をぐるっと丸くまわっている、まあるい緑の山手線、ご存知ですよね。

だいたいみんな、この円のどこかからどこかまで、目的地に向かって便利な範囲で乗って降りますよね。

この円、一周回るとちょうど1時間くらいなんですよ。

「酔っ払って乗ってて一周回っちゃった」なんて話は聞いたことありますが、あえて一周する人ってあまりいませんよね。

だって1時間かけてスタート地点に戻ってくるなんて、都会の真ん中でそんな無駄なことしませんもん。

実は、私、人生で一度だけ、意味もなく一周回ってみたことがありました。


かれこれ20年ほど前、司法試験受験生の時代です。

私はロースクール出身の新司法試験世代一期生なのですが、実はその前、旧司法試験というのも4回受けていました。

いずれも、箸にも棒にもかからず一次試験で落ち続けて、結局一旦諦め、数年後に再チャレンジでロースクールに入ったわけです。

ちょうどその旧司法試験、最後の4回目チャレンジの頃だったと思います。

いくら勉強しても、何をやってもうまくいかなくて、どうすれば良いのかもわからない、キューブの中のネズミみたいな感じで、いろんなことをしてみたんですよね。

喫茶店で毎日深夜に勉強するとか、点数が一点足りないごとに百円をドブに捨ててみるとか(これは結局やりませんでしたが)。

当時、山手線で御徒町から渋谷にある予備校の自習室に通っていたのですが、山手線の中ではもちろん勉強してました。 座席に座れましたし。

で、ある日、渋谷につきそうな時に、判例を読みながら、ふと、「もう一周してみたらどうなるのかな」と思いました。

渋谷からまた一周まわれば、もう一度渋谷に戻るまでのちょうど1時間、余計に勉強できるわけです。

どうせ、何かの約束や予定があるわけではないんだし、試しにもう一周回ることにしました。

いつも、時間どおり、ルーティンどおり動いているサイクルを外れる不安。

あとは、自分だけがそのままで、周りがどんどん乗り降りして変わっていく変化を感じました。

結局、無駄に乗った一周は、あまり実りあるものではありませんでした。

やっぱり、時間は一直線に未来に向かって進んでいる。同じところをぐるぐる回るために使うのではなく、まっすぐ先に進むベクトルで使わないと居心地悪い。

人間本能的にそういう風にできてるもんだな、と体感した経験でした。

悩みもそう。

同じところをぐるぐる回っているのは居心地の悪いものですよね。

「最近自分、ぐるぐるしてるなあ」と思ったら早めに誰かに相談した方が良いですよ。


ちなみに!

御徒町から渋谷に通うのに、私が持っていたのは、池袋周りの定期でした。

なので、その定期では本来山手線一周はできず、渋谷から御徒町までの品川経由の区間は無賃乗車ということになります。

で、当時の私はどうしたのかというと、あとから渋谷で駅員さんに無賃区間の料金について質問して、別にいいよと優しく不問に付されました。

「なんなんだこの子は」という顔を忘れられません。

浦和から代々木に出てきて、山手線に乗っていて思い出した出来事です。

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