相続のこと

不動産神話と配偶者居住権

相続のお仕事を多くやっていると思うのは、

「遺産イコール自宅不動産のみ、という方、多いよなあ」

ということです。
相続では簡単に分けられない不動産を

どう分けようか??で揉めるケースが

とっても多いです。

 

これって、ひと昔前にみんなが信じていた

「不動産絶対神話」に原因があると思うんですよね。

 

長きにわたり、私たちの多くは

「社会に出て給料もらうようになったら

クルマ買って家買って」っていう

人生ゲーム的ステップを

普遍的な理想として設定していました。

 

生きる上での当たり前の手順のように、

みんな人生の大部分を

数千万円の住宅ローン債務者として

過ごしていたわけです。

 

そして、勤勉な日本の人たちは、

「ボーナス出た」

「臨時収入入った」

さらには「親の遺産が入った」

というときでさえ

手元の現金を何かに消費することなく

前倒し弁済にあてました。

 

その結果、

フタを開けてみたら

資産が自分の住んでる不動産しかない

なんてこともあるわけです。

遺産が居住用不動産しかない。

 

こういう場合、

相続人が複数いるととても困ります。

 

特に、相続人のうちの一部が

その不動産に住んでいる、というケース。
例えば、

妻が夫の死亡後もそのまま夫名義の不動産に住みたい

という場合に、他の相続人の中に1人でも

「自分もちゃんと相続分が欲しい」

という人がいようものなら

かわりのお金を渡さなければいけなくなるわけです。

さらに、ご承知のとおり、

これまで働く女性が少なかった我が国では

「妻が専業主婦で、固有の財産を持っていない」

ことも多いので、状況を深刻にします。

 

不動産を全部自分が1人で相続するかわりに

他の相続人に払うべき相応のお金を

用意することができない。

 

結果、相続をきっかけに、

70代の妻が家を売って

賃貸アパートに行かなければならない、

なんていう悲劇もあり得るのです。

 

※「まさか、母と子で不動産を取り合うなんて

ありえない」と思う方もいるかもしれません。

 

でもね、、、実はあります。

そのあたりのはなしはまた今度。

 

2020年4月から始まる配偶者居住権制度は

こういう「遺産のほとんどが居住用不動産」

という困った場合にも、

残された配偶者の居住を守るための

選択肢を増やします。

 

不動産の財産的価値から、

住む権利(居住権)と

残りの権利(居住権の負担付き所有権)に分けて

それぞれ別々の相続人が

もらうことができるようになるので

柔軟な解決が可能になります。

 

この不動産を

★手作り配偶者居住権写真1

 

このように権利とハコモノに分けてしまうイメージです。

 

★手作り配偶者居住権写真2

たとえば、亡くなった父の遺産が

5000万円の不動産しかない

というケースでも、

配偶者居住権を妻に、残りの所有権を息子に、

というふうに分けることもできる、というわけです。

 

配偶者居住権の計算方法は複雑なのですが、

一例としてざっくり

(正確にはもっと複雑な計算式がありますが)

賃料×妻の平均余命で計算して

たとえば賃料10万円×240ヶ月(20年)=2400万円

とすると、

配偶者居住権2400万円
残りの所有権2600万円

など、比較的公平な分け方ができたりもするわけです。

 

 

この不動産から住む権利というのを

抽出しちゃったところが新しい。

配偶者居住権は、新しい権利であるがゆえ、

これまでの制度との折り合いや、

「こんな場合はどうなるのかな」

ということについて、

詳細はまた書きたいと思います。
とはいえ、配偶者居住権は、

突然起こる相続という「地殻変動」から

身を守る数あるオプションのうちの一つ。

配偶者居住権に頼らない備えの選択肢を

もっと発信していきますよー。

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