弁護士目線で考えること

リモート裁判が始まる夢をみた。

新型コロナで裁判所から日々びっくりするような連絡が来ています。

急を要しない破産申し立てをひかえよとか、判決の期日すら延期するとか。

裁判所は裁判官だけでなく書記官、事務官、警備員さんなどの職員が働いている組織。それぞれ皆さん人の子、人の親ですからね。

事件があればそれだけの職員が動かざるを得ない。

それに、裁判があると、あとで詳しく述べますが、当事者が裁判所にこなければならない。

裁判所としては、クラスターを起こすべきではない。ここは徹底して動きを止めなければならない。という判断なのだと思います。

一方、当事者への影響は計り知れません。

例えば、判決延期による遅延損害金の加算。

民事の裁判はほとんどが金銭請求です。

金銭支払いを命じる判決が確定すると、命じられた側は、「支払い済みまで」通常年利5%とか6%とかの遅延損害金も加算した額を払わねばなりません。

(この法定利率は2020年4月から3%になっていますが、現在すでに始まっている裁判は据え置きです。)

つまり、支払うまでは毎日毎日、日割りで遅延損害金が膨らんでいくんです。

金額の問題ではありませんが、例えば1億円の請求なら、1年判決が延期すると600万円の利息がつくんですね。

払う側にしてみれば恐ろしい話。

こんなふうに法的な手続きの停止は人に大きな影響を与えるわけだから、そのへん考えてなんとか例外を作れないものか、とおもいます。

たとえばテレ判決とか、リモート裁判とか。

「えっ!裁判てそういうのないの?」と思った方います?

そうなんです。ないんです!

そのあたり、ちょっと聞いて欲しい。


スマホやらクラウドやらの普及した今を現代とするならば、裁判所はまだ中世みたいなシステムです。

まず民事裁判では、どんなに遠くの裁判所でも、基本的には出頭が必要です。

これは裁判の基本として、直接裁判所で主張とか反論とかやりとりしなければいけないという法律上の原則があるから。

でも実際は大事なことは書面で提出するので、はるばる出かけていった裁判所でやることは、「じゃ次回期日はいつにします?」って手帳広げるだけ、なんてことも多々あります。

「さすがにそれだとアレだよね」ってことで、現在は当事者のどちらか(原告か被告か)が出頭していれば、他方は電話で参加するという中世の裁判所にしてはハイパースペシャルな措置も認められるようになりました。

これが電話会議の爆誕です。なんか特殊というか、他のどこでも見ることのない黒い円盤みたいなメカ(要はスピーカー電話)を使用して、遠方の弁護士事務所と電話する、という中世としては画期的なシステム。

でも、実はこれには致命的な足かせが。

遠方から裁判に参加できるのはあくまで一方だけで、どちらかは出頭しなければならないところは変わっていないわけです。

ちなみに、なんでわざわざ遠くの裁判所で裁判やるの?と思う方もいますよね。

実は、裁判はどこでやるかが法律で決まっています。

例えば金銭請求なら債権者の住所地とか、相続がらみなら亡くなった方の最後の住所地とか。

テーマによってルールがあるので、なんかとんでもなく遠方、なんてこともあります。

東京と埼玉の弁護士が名古屋で裁判する、なんてこともよくあるんです。

まあ、名古屋なんて東京からだと埼玉の川越支部より近いかけどね。多分。

そういう裁判のルールなので、出頭しなければならないというのは当事者のかたにとって、一つの訴訟障壁にもなります。

当然遠方への出張となれば費用もかさむわけで、弁護士に頼むことが実際できずに諦めるなんてこともあるんじゃないかな。

そもそも、今や普通の会社ならスカイプやらズームやらのインターネットを使っての会議だってある時代。

セキュリティがどうのとかいっても、機密を扱う業種は裁判所ばかりではなく、一般企業だって同じですよね。そこはなんとかできる気もする。

百歩譲って、ネットは使わないにしても、準備の手続きの期日だけなら両方の当事者とも電話で参加すればいいじゃないの?と思うのよ。

非公式に打ち合わせ名目でやったこともあるから、技術的にはできるんです。

今回裁判所が停止したのも、直接当事者がいかなければいけないのも原因の一つであるならば、電話会議さえ柔軟にできれば期日を延期して時間を無駄にする必要なんかなかったと思うんだよね。

さらにいえば、手続き全部終わって後は判決言い渡しだけ、なんてケースではあとは裁判所のお仕事だけ。

ならば、裁判官のお得意の宅庁システム(平日に裁判所に出勤しないで自宅で仕事すること。私が研修生時代の10年前には、部長クラスの裁判官が「毎週木曜は宅庁日」とかやっていました。ま、最近はあまり聞きませんが。。)を活用して、できた判決を書記官にメール添付で送って、YouTubeで言い渡す、とかやってくれないかしら。

夢だな。

どうかこのテレワークの流れをくんで、裁判も少しは近代化するといいな。

ここまで我慢したんだし、直接主義の神様もお怒りにならないと思うの。

多分まだまだ続く新型コロナの影響。

これを機に裁判所も変わってほしいぞー。

と閑散とした霞が関で叫ぶ。

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