顧客からの理不尽なクレームや迷惑行為——いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対応が、いよいよ法律上の「義務」になります。
今日は、経営者の皆さまに知っておいていただきたいポイントを整理しました。
最後の5には、あまり他には書いていないと思う、経営者の皆さんに知っておいて欲しいことをまとめていますので、読んでくださいね。
1 概要
来月、2026年(令和8年)10月1日、改正・労働施策総合推進法が施行され、顧客・取引先等からの著しい迷惑行為(カスハラ)について、事業主に相談体制の整備等が法律上義務付けられます。
すでにパワハラ防止措置が義務化されているのと同じ法律に、カスハラ防止措置義務が新設される形です。
ポイントは、単なる「努力義務」(がんばればよい)ではなく法的な「義務」(やらないと違法になる)ということ。
もう一度言います。やらないと違法になります(ここは最後の5につながります。)
カスハラから従業員を守る法的な義務ができた一方で、経営者にとっては対応コストが増える改正でもあります。
2 誰が対象か
業種・企業規模を問わず、従業員(バイトもです)を1人でも雇用する「すべての事業主」が対象です。
大企業だけの話ではなく、個人事業主でも従業員を1人でも雇っていれば対象になるというインパクトのある改正になります。
3 対象者は、何をしなければならないか
厚生労働省の指針(告示第51号)で、事業主が講じるべき措置として、主に次の5つが示されています。ひとまずはキーワードだけでも覚えてください。
① 「カスハラガイドライン」の周知
② 相談窓口の設置
③ 被害を受けた労働者への配慮(一人で対応させないなど)
④ 研修・対応マニュアルの整備
⑤ プライバシー保護
4 しない場合どうなるか
違反しても、懲役や罰金といった直接の刑事罰はありません。ただし、行政による企業名の公表などのペナルティはあります。
また、労働局への報告を怠ったり虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料が科されます。
勧告に従わず企業名が公表されれば、対顧客ビジネスではブランド毀損(レピュテーションリスク)にもつながりかねません。
しかし、私の予想では、義務違反の行政ペナルティが発動するのは、当面の間、かなり悪質な事案に限られると思っています。
5 峯岸的視点:本当に怖いのは「行政罰」より「民事訴訟」
ここまでの行政上のペナルティも軽視できませんが、私が実務上もっと怖いと感じているのは、公的な資料にはあまり書かれていないポイントです。
それは、従業員からの民事訴訟です。
具体的には、カスハラ対策をしていないこと自体が、従業員から会社に対する「安全配慮義務違反(労働契約法5条)」を理由とする損害賠償請求の場面で、会社に不利な事実として使われてしまうということです。
社長は、自分の会社の従業員を、カスハラから守る法的な義務を負うというのが今回の改正の最大のキモ。
しかし、私が一番伝えたいのは、次の点です。
逆に言えば、指針に沿った対策をきちんと講じておけば、それは会社にとって有利な事実になるよ、ということです。
カスハラ対策の有無は、今後、こうした民事訴訟の勝敗を左右する材料になっていくと考えられますので、行政罰の有無だけでなく、この観点からもぜひ準備を進めていただきたいと思います。
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