99.9%。テレビドラマの題名にもなったし、もうみなさんよくご存知のとおり、刑事事件で無罪になるのはこのくらい難しいと言われていました。
逆に、99.9%というくらい、弁護士にとって勝って当たり前がスタンダードな手続きもあります。
それは破産です。
借金が返せないほどに膨らんでしまった時に申し立てる、裁判の一種です。
「勝つ」というと語弊がありますが、言い換えれば借金を返さないでいられるようになる、法律用語では「免責許可」といいます。
借金に苦しんでいる人にとって、それまで苦しんできた借金返済から解放される免責許可は、最大の成果です。
この破産、私も申立代理人や破産管財人としてこれまでおそらく100件以上は関わっていると思いますが、私の免責許可率は100%です。
というか、私のまわりで免責許可されなかったという話は聞いたことがありません。
その意味で99.9%。弁護士としては受任したならば絶対に免責許可を認めてもらわないといけないカテゴリーの事件です。
こんなふうに言うと、詳しい方なら、「あれ?ギャンブルにお金を投じてしまったとか、ブランド品を買いまくってしまったとかだとダメじゃなかった?」と疑問に思うかもしれません。
インターネットでは、「ギャンブルだと免責が受けられないよ」なんて書いてあるサイトもありますから。
たしかにギャンブルや浪費は免責不許可事由です。
でも、そのような免責不許可事由があっても、事情により免責を受けられることがあります。
それを含めて99.9%。そこは弁護士としては当たり前に求められるスキルです。
もちろん、実際に返す約束をしてお金を受け取ったのに返せなくなるわけですから、債権者としては絶対に許せない。
債権者側についたことももちろんありますから、その悔しさはわかります。
それでも法律は、そういう債権者から見れば一見不条理とも思える破産という制度を認めています。
それは、人生一度やり直しを認めて、お金で失敗した人にもやり直しのチャンスを認めるべきという趣旨からです。
破産に限らず、一生懸命に生きていても、どうしてもトラブルになることはありえます。
社会のシステム、経済。そういう自分でコントロールできない大きな流れに飲み込まれて、その結果うまくいかないことだってある。
先日、終了した破産の案件は、2011年、東日本大地震とその後の原発事故がなければおそらく起きなかったものでした。
もちろん、原発事故のせいで全員が破産するわけではないから、責任転嫁はできません。破産者が支払い不能に至った経緯については大いに反省すべきこと。
しかし、どんな事案でも、本人の話をよくよく聞いて紐解いていくと、絶対にこれは裁判所に伝えたい、と思えるその人なりのストーリーが見えてくるのです。
私たち弁護士は、そのストーリーを本人以上に事実に肉薄し、リアルに文章で再現し、説得的に代弁していく仕事です。
最初に述べたように、99.9%勝ちが決まっているような破産事件であっても同じです。
なぜならそれは、破産することになってしまったストーリーを本人にあらためて見える化し、省みる機会を提供し、そして破産者が二度と同じこ過ちを繰り返さないようにするため。
遠方の裁判所での破産期日の時は、ほぼ一日がかりで出頭します。
そして、長い時間並走した依頼者と最後にお目にかかるのもその裁判の当日であることが多いです。
「どうぞお元気で。そしてこの先の人生が幸せでありますように。」
そう願って笑顔でお別れをします。
依頼者の再出発を一番近くで送り出せた日は、私も生きててよかったぜと思います。
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